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横浜地方裁判所 昭和51年(ワ)925号 判決 1978年9月14日

主文

被告は原告に対し、金一四六万八七〇六円及び内金一三二万八七〇六円に対する昭和五一年七月二八日から、内金一四万円に対する本判決確定の日からそれぞれ支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを二分し、その一を被告の負担とし、その一を原告の負担とする。

この判決の第一項は仮りに執行することができる。

事実

第一双方の求めた裁判

一  原告

(一)  被告は原告に対し、金一〇四三万八一六〇円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

(三)  仮執行の宣言

二  被告

(一)  原告の請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告の負担とする。

第二双方の主張

一  請求原因

(一)  事故の発生と態様

日時 昭和四九年八月二六日午後八時二〇分頃

場所 横浜市西区浜松町一二の二七

加害車 ダンプカー(横浜四四ひ四七七一号)運転者渡辺不二夫

被害車 普通乗用自動車(品川五一ひ六五一五号)運転者原告

事故の態様 加害車が被害車に追突し、原告が頸椎捻挫等の傷害を蒙つた。

(二)  責任原因

被告は、加害車を自己のため運行の用に供していたものであり、又渡辺不二夫は被告の使用人であるところ、本件事故は渡辺不二夫のスピード違反と前方不注視の過失により、しかも被告の業務執行中に生じたものであるから、被告は本件事故によつて生じた損害を賠償する義務がある。

(三)  損害 総計金一一三三万八一六〇円

1 医療費等

(1) 済生会神奈川県病院 金一一万二四八〇円

昭和四九年八月二六日から昭和五〇年二月一七日まで通院

(2) 磯子中央病院 金一七四万三六〇〇円

昭和五〇年四月八日から同年七月八日まで入院

同年七月九日から昭和五一年五月一四日まで通院

(3) 漢方薬、マツサージ、鍼治療費 金七万七〇〇〇円

(4) 入院雑費(三ケ月分) 金四万五〇〇〇円

(5) 通院交通費 金七万〇〇八〇円

バス、電車賃往復三二〇円の二一九日分

2 休業損害

原告は、本件事故当時金属回収業を営み、年収金三〇〇万円のところ、本件事故による傷害のため、昭和四九年八月二六日から昭和五一年五月一四日まで休業し、金五五〇万円の損害を蒙つた。

3 逸失利益

原告は本件事故のため、後遺症として頸椎、頭痛、眩暈、背痛、肩こり、右手しびれ等の頑固な神経症状を残し、頸痛3バルソニー形成、5 6変形著明、前彎消失し、自賠法施行令別表第一二級に当り、労働能力喪失率一四パーセント、喪失期間四年が相当であり、原告の前記年収によりホフマン式計算法により現価を算出すると、金一四〇万円となる。

4 慰藉料

入、通院慰藉料 金一三五万円

後遺症に対する慰藉料 金一〇四万円

(四)  損害の填補

原告は被告から、金一三〇万円の支払を受けた。

(五)  弁護士費用 金四〇万円

(六)  よつて原告は被告に対し、金一〇四三万八一六〇円及びこれに対する不法行為後の本訴状送達の日の翌日から支払ずみにいたるまで、民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

(一)  請求原因(一)の事実は認める。

(二)  同(二)の事実は認める。

(三)  同(三)の事実は争う。特に昭和五〇年四月七日以降の治療は過剰診療であつて、本件事故と相当因果関係はない。

(四)  同(四)の事実は認める。

(五)  同(五)は争う。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因(一)、(二)の事実は当事者間に争いがないので、被告は原告に対し、本件事故によつて生じた損害を賠償する責任がある。

二  損害額について判断する。

(一)  治療費等

1  成立に争いのない甲第八号証の一ないし三〇、第一七号証、原告本人尋問の結果(第一回)によつて成立を認める甲第七号証に同本人尋問の結果(第一回)によると、原告は本件事故によつて頸椎捻挫の傷害を受け、その治療のため済生会神奈川県病院に昭和四九年八月二六日から昭和五〇年二月一七日まで(実日数九九日)通院治療を受け、金一一万二四八〇円の治療費を要した事実が認められる。

2  成立に争いのない甲第一〇号証の一ないし七、原告本人尋問の結果(第一回)によると、原告は磯子中央病院に、昭和五〇年四月八日から同年七月八日まで(九二日間)入院し、その後昭和五一年五月一四日まで(実日数二一九日)通院し、その治療費として金一七四万三六〇〇円を要した事実が認められるが、次に認定するとおり、右治療費のうち本件事故と相当因果関係を有するのは、三分の一の金五八万一二〇〇円と認めるのが相当である。

すなわち、

成立に争いのない甲第一ないし第六号証、原本の存在成立に争いのない乙第二号証の一ないし七、第三号証の一、二、第四号証の一ないし四、第五号証の一、二、第六、第七号証の各一ないし七、第八号証の一ないし六、証人野口芳昭、同桜田允也、同松本現八の各証言、原告本人尋問の結果(第一、二回)、鑑定の結果によると、本件交通事故は被害車がサイドブレーキをかけて停車中に追突され、被害車が二ないし三メートル前に押出された程度のものであつたこと、事故直後済生会神奈川県病院において診断を受けた際は、骨折、脱臼、椎間板、神経等に損傷はなく、頸椎捻挫による筋肉の緊張と疼痛があつたこと、昭和五〇年二月五日頃初めて腰部痛を訴え出し、右病院を退院する同年二月一七日には頂部痛が残る程度であつたこと、原告は大正三年生れの男子で、昭和二三年以来金属回収業を営み、重量物の運搬作業に従事していたこと、磯子中央病院の診断である腰椎、胸椎捻挫の症状は、老人性の変化が主因であり、頸椎捻挫による症状についてもかなりの部分が老人性の変化が原因であること、原告は済生会神奈川県病院に通院中から自ら自動車を運転していたし、又右病院退院後磯子中央病院に入院するまでの二ケ月間は全く医師の治療を受けていなかつたところ、被告との示談交渉が決裂するとその数日後に入院したこと、原告は現在頸部等の疼痛は全くなく、一日中車を運転した場合に肩がはる程度であること等の事実が認められ、これらの事実によると、原告の済生会神奈川県病院の治療を打切つた昭和五〇年二月一八日以後の原告の症状は、本件事故と相当因果関係を有する部分は三分の一、その余の部分は老人性等の変化によるものと認めるのが相当である。

3  原告本人尋問の結果(第一回)によつて成立を認める甲第九号証の二ないし二二に同本人尋問(第一回)の結果によると、原告はマツサージ料、漢方薬代金として金七万五〇〇〇円を支出したことが認められるが、証人桜田允也の証言に右甲第九号証の二ないし二二によると、右費用のかなりの部分は済生会神奈川県病院に通院治療(マツサージ、電気治療、投薬)中のものであり、しかも医師の指示を受けたものでもないこと等の事実が認められ、この事実によると、全部を本件事故に因るものと認めるのは相当でなく、二分の一の金三万七五〇〇円が本件事故と相当因果関係にあるものと認める。

4  原告は前認定のとおり、磯子中央病院に三ケ月入院したが、本件事故によるのは三分の一と認められるので、一日金五〇〇円の割合による三ケ月分の三分の一に当る金一万五、〇〇〇円の雑費を要したものと認めるのが相当である。

5  原告は前認定のとおり磯子中央病院に二一九日通院したが、原告本人尋問の結果(第一回)によつて成立を認める甲第一一号証の一、二、同本人尋問の結果によると、往復運賃は金三二〇円であることが認められるので、通院費の計は金七万〇〇八〇円であるが、本件事故による損害はその三分の一の金二万三三六〇円となる。

(二)  休業損害

原告は前認定のとおり金属回収業を営んでいるところ、成立に争いのない甲一五号証、乙五号証の一、二、原告本人尋問の結果(第一回)によつて成立を認める甲第一二ないし第一五号証に同本人尋問の結果(第一、二回)によると、原告は事故時から昭和五一年五月一四日まで休業したこと、金属回収業の収入は好不況の差が甚しく、昭和四八年の収入が金九二万五〇〇〇円であるのに、事故時の昭和四九年の収入は金一九三万九〇〇〇円であること、収益率は三割程度(甲第一二ないし第一五号証による昭和四九年の総売上は合計金六〇三万〇四六〇円であるから、右収入金一九三万九〇〇〇円はその約三割強に当る。)であること、昭和四九年度の収入を事故の前後に分けると、事故前の売上が金五七七万二六四〇円であるから、これを前提とした月収は金二一万六〇〇〇円を下らないこと、しかしその後の経済事情によれば昭和四九年当時の収益をあげ得たかどうか疑問であること、原告の昭和四九年の収益は、原告一人ではなく、原告の長男健一(昭和二三年生)の稼働による部分があること(原告本人尋問の結果(第一、二回)と原告の昭和四八年度、昭和四九年度の所得税の確定申告書に長男健一を扶養家族として扶養控除していることから認める。)等の事実が認められ、これらの事実によると、原告の寄与分は一ケ月金一〇万円を下らないものと認めるのが相当である。

これを前提として、休業損害を計算すると、事故時から済生会神奈川県病院通院終了時の昭和五〇年二月一七日までは全額の金五七万六六六六円、その後昭和五一年五月一四日までは三分の一の金五〇万円が休業損害と認める。

(三)  逸失利益

鑑定の結果によると、原告の後遺症は一四級(老人性の変化を含めて)に該当することが認められ、これに反する甲第一六号証に証人野口芳昭の証言は右証拠に対比して採用できない。

そうすると労働能力喪失率は五パーセント、喪失期間は三年と認めるのが相当であり、喪失率五パーセントのうち三分の二は老人性の変化によるものであるので、これを前提として磯子中央病院退院時から三年間の逸失利益は金六万円となる。

(四)  前認定の原告の入通院の期間、後遺症による慰藉料は、次のとおりと認めるのが相当である。

入通院慰藉料 金六四万六〇〇〇円

(済生会神奈川県病院通院分は全額の金三四万五〇〇〇円、磯子中央病院入院分は三分の一の金一三万五〇〇〇円、同病院通院分は三分の一の金一六万六〇〇〇円の合計)

後遺症慰藉料 金九万円

(但し一四級の三分の一)

三  填補

原告の損害は、以上認定のとおり金二六二万八七〇六円であるところ、被告から金一三〇万円の支払を受けたことは当事者間に争いがないので、残額は金一三二万八七〇六円となつた。

四  弁護士費用

本件請求額、認容額、事案の内容等諸般の事情によれば、弁護士費用は金一四万円と認めるのが相当である。

五  結論

以上のとおり原告の本訴請求は、金一四六万八七〇六円及び内金一三二万八七〇六円に対する不法行為後の昭和五一年七月二八日(訴状送達の日の翌日であること記録上明らかである。)から、金一四万円に対する本判決確定の日からそれぞれ支払ずみにいたるまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるので正当として認容し、その余は理由がないので失当として棄却し、訴訟費用の負担について民訴法九二条、八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 菅原敏彦)

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